新型コロナウイルスのワクチン接種で、和歌山県が全国1位の接種率で進んでいる。県、市町村、各医師会などが連携し取り組んでいる成果だが、接種を終えた高齢者からは安堵(あんど)の声が聞かれており、次の段階でもスムーズに流れて早く終息に向かってくれることを願う。
感染拡大の当初から、感染予防と経済対策は両輪という指摘がされているが、自治体による経済支援には格差があり、特に支援が行き届かない地域では先行きが見通せない状態だ。那智勝浦町の自営業の女性は「怒りをぶつけるところがない」と、コロナ禍で苦しむ飲食業や宿泊業などの声を代弁する。さらに、コロナが流行し始めた昨春の段階で、ここから1年半以上も苦しむことを想定していた人は少なく、疲れは限界にきていると指摘。
この女性の宿泊施設では、昨年4月の売り上げが対前年同月の1割。国の雇用調整助成金を使って従業員の雇用は守りながら、常連客の利用で何とかしのいできた。今年に入り2・3月は回復したものの、4月以降は再び厳しい状況に。例年町内でのスポーツ合宿で夏には大勢の利用があるが、それもキャンセルになったことを明かす。
大型宿泊施設の状況はもっと深刻だ。国土強靭(きょうじん)化計画で、築年数が経過している建物は補強し、多額を投資したが、収益を上げる前にコロナで大打撃を受けた。大型宿泊施設が立ち行かなくなると、勝浦温泉のブランドが消えてしまうのではないかと危惧する声もある。ワクチン接種が一定数進めば、個人客が外出すると見込まれるが、この波に乗り遅れないように、今のうちから準備をする必要があるのではないだろうか。
一方、各飲食店は店内の感染防止対策を講じながら、テイクアウトを導入するなど努力を続けるが、もともと営業時間内に約2回転させて収益を上げていたのが、1回転もしない、または客がゼロの日も。これでは経営は非常に厳しく、「いつまで頑張ればいいのか」と不安で精神的な疲れは計り知れない。ワクチン接種で命が助かっても、経済で命を落とすことのないようにしたい。自助努力だけでは限界で、災害時と同じ、自治体の支援や共助が必要。
今月は各自治体で議会定例会が行われる。当局も議会も地元経済の現状を改めて把握したうえで、どのような支援が効果的なのかを議論し、必要な施策はスピード感をもって取り組んでもらいたい。