新型コロナウイルス感染者が各地で急増する中、高齢者に対するワクチン接種がようやく始まった。和歌山県内では和歌山市が12日に開始。本紙関係では、那智勝浦町が19日、新宮市は25日に開始する。ワクチンへの期待感は強く、各自治体での接種が円滑に進むことが、早期終息の第一歩になる。そのためには、国が必要量をしっかりと各自治体や医療機関に供給することが大切だが、これまでの供給量は極めて少なく、国が示す6月末までの高齢者全員分のワクチン確保は大丈夫だろうかと不安になる。
実務を担う自治体や医療機関は大変だ。自治体側は、国から連絡を受けた供給量に基づき、接種会場や医療従事者の確保に努めるとともに、住民からの予約を受け付ける。新宮市では、25日に市役所別館で行う集団接種の受付を12日に開始したところ、3日間で1700人を超える市民から申し込みがあった。定員360人の高年齢順で受付を確定するため、いち早く申し込んだ人でも今回の集団接種を受けることが難しいという人も当然出てくる。
また、医療機関への問い合わせの電話が殺到し、通常業務に支障をきたす状況が生まれた。集団接種の予約は医療機関ではできず、個別接種も5月予定でまだ予約を受け付けていない。新宮市から送付された接種券の説明では分かりづらく、結果として医療機関に混乱を生じさせる形となった。国のワクチン供給の見通しが定まらない難しさはあるが、正確な情報を分かりやすく伝えることが住民の安心感、さらには混乱防止につながる。各自治体は、広報紙やホームページへの掲載に加え、こまめに報道機関への資料提供を行うなど、きめ細やかな情報発信を続けてほしい。
併せて、集団接種会場でのキャンセルなどにより、貴重なワクチンが無駄にならないよう、あらかじめさまざまな状況を想定し、リスク回避することも大切になる。
まだ先だが、高齢者の次は64歳以下で慢性の基礎疾患がある人への接種に移る。一般の人の接種が始まるのはさらにそのあと。コロナ禍での生活が1年以上続き、「自粛疲れ」や「コロナ慣れ」が指摘されるが、現在の感染状況を見ると、気を緩めるわけにはいかない。ワクチン接種が全国全ての希望者にわたり、終息の見通しが立つまでは、引き続きマスク着用や手指消毒、3密回避など、基本的な感染防止対策の徹底が求められる。