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社説「命守るため 情報発信すべき」

 新型コロナウイルスの感染拡大が全国で止まらない。昨年末からの第3波で、和歌山、三重両県も一日の感染者数最多を更新している。

 この地域では、昨年春に国の緊急事態宣言が全国に出されたときから、感染者を出さないための努力と我慢を続けてきた。年末年始に帰省を断念、年明けに予定していた成人式についても、議会から強い要請を受けるなどして、ほとんどの自治体が延期を決定。いずれも、高齢者が多く暮らし、限られた医療資源というこの地域の特性を考えてのことで、これまでこの地域では、他地域に比べて感染者数が圧倒的に少ないのは、地域住民の努力や意識して行動していることが大きな要因といえる。
 
 新宮保健所管内(新宮市~串本町)では今年に入り、5人の感染が確認された(24日現在、県外計上分含む)。このうち最初に感染が確認された男性は年末年始に東京都へ帰省中、発熱がありPCR検査を受けたが、結果が判明する前に和歌山県に戻り職場へ出勤。その後、陽性が分かった。
 
 この地域では感染者の発生を受け、和歌山県が発表する情報だけにとどまらず、さまざまな憶測やデマも広がった。成人式への出席を我慢した若者を含め、多くの地域住民が感染防止への努力を続ける中、検査結果が分からない状態で戻り出勤した男性、さらに従業員に年末年始の帰省自粛を呼び掛けるなど地域の実情を踏まえた対応が十分でなかった事業所にも道義的な責任はあるのでは。
 
 和歌山県は昨年12月、新型コロナ感染症に関する差別防止対策を盛り込んだ条例を施行した。このようなコロナ差別に関する条例は全国各地で制定されているが、SNS上などの差別発言に対し削除を勧告し、ネットのプロバイダーにも削除を求めることまで踏み込んだ条例は都道府県初という。
 
 一方で、住民を安心させるためには正確な情報が不可欠。その役割は基本的に行政が担うところだが、感染者が発生した際の公表基準に関して、和歌山県と三重県では大きな違いがある。感染者の居住地を和歌山県は保健所単位での公表、三重県では市町単位で公表する。ただし、和歌山県も公務員が感染したケースでは、報道機関からの質問に対して所属まで公表している。民間は守るが、公務員は公表という一律ではないルールにも疑問が残る。
 
 生活圏は同じだが、県の違いや、民間と公務員の違いよる情報の差に違和感を覚える住民もいる。現状の基準の中で各自治体は、住民の命を守ること、安全安心を最優先に、情報収集やどのような発信方法があるのかを考えたうえで、積極的に発信してもらいたい。
 

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