大河内川沿いの盛り土は、指導と勧告を経て是正措置の命令に至った。熱海の土石流災害から建設残土の不法投棄は社会問題で、命令対象が現役の町議となれば、全国的にも注目されるのは理解できる。それでも、自然豊かで住みよい紀北町の名がこのニュースで知られるのは、素直に悲しい。
命令を受けた議員は、委員会でも積極的に質問し、一般質問にもよく登壇している。当人には言い分もあるとは思うが、よく口にする「町民のために」という言葉をどう受け取ればよいのか。住民からの署名を受け取った際、尾上町長は「町民と議会、行政がともに同じ方向を向いて対応してきた中で、定めたルールを守っていない」とコメントしているが、「議会」を入れているのは今思えば示唆的ではある。
住民が声を上げてから1年以上が経ち、事態は動いたが、土砂が適正に撤去されて住民の不安が解消されることが重要。住み慣れたまちに、安心して住むことができるのは、ありふれた当たり前の願いであり、社会福祉と地方自治の根源である。
(R)