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「理想の避難所」考える 安全や快適性追求 相野谷中で実践授業 2年生6人

 紀宝町立相野谷中は2011(平成23)年の紀伊半島大水害以降、2年生が避難所運営を考える授業に取り組んでいる。同校の施設は長期の生活を想定した避難所に指定されており、当時は4か月以上にわたり体育館で過ごした人もいた。6人は文献を調べたり、経験者から聞き取ったりした上で避難所のあるべき姿を考え、12日に地域住民を招いて発表した。
 
 
■性犯罪との戦い
 
 「女性は性加害を受けるリスクがあります。安全な2階武道場にいてもらい、1階体育館の男性と別々の場所にパーティションを配置しました」。ある女子生徒は、危険をありのままに伝え、対策を提示した。「東日本大震災女性支援ネットワーク」が13(平成25)年に発表した調査報告によると、津波で家族が行方不明になった女性に対し、避難所運営に携わっていた「リーダー格」の男性が、物資を融通する見返りとして性的な関係を強要するなど、卑劣な性犯罪の事例があったという。
 
 生徒の説明通り、同校は1階に体育館、2階に畳敷きの武道場がある。武道場につながる階段は1か所のみで、出入口に見張りを置くことで、夜中に侵入した暴漢に襲われる危険性を低減できる。過去の事例を参考に、子どもたちが自ら考えついた。女子生徒は、アイデアを再現した武道場に一行を招いた。感心の声が漏れる前で「小さい子どもが夜泣きをした時に配慮できる。避難者が安心して暮らせるようになる」と〝一挙両得〟の提案をすると、自然と拍手が起こった。田中伊織さん(相野谷小5年)は「先輩は本当によく考えている。自分も頑張って勉強しないと」と進学後を見据えた。
 
 
■町の支援、存分に生かす
 
 東日本大震災の反省から、全国的にテント型のパーティションを配備し、プライバシーや安全面に配慮する取り組みが進んだ。紀宝町も例外ではなく、これまでにパーティション1100個を用意。相野谷中にはうち132個が保管されている。空気を入れてふくらませ、快適な寝心地を提供するエアーベッドも同数用意した。床に雑魚寝をしていた当時の劣悪な環境のイメージからの脱却を図っている。
 
 生徒らはパーティション内に机を置くことを思いついた。「一休みできる空間があると全然違う。自分の部屋のようになる」。町の防災担当職員は、メモを取りながら「参考になる」とつぶやいた。仲森久校長は「こうして前に出ることで、当事者意識が芽生えたようだ。入学したての頃はやや困惑していたが、地域のリーダーになる前からよく学んでいる」と高く評価する。
 
 
■学習を支える経験
 
 カリキュラムは「総合的な学習」の一環に組み込まれている。従来の防災教育に人権保護の観点を加えた授業は珍しく、三重県教育委員会も職員を視察に派遣するなど注目している。
 
 大水害では、学校のそばを流れる相野谷川が氾濫し、町全体で59件の家屋が全壊した。同地区では幸い、一時避難所の大里多目的集会施設や同校体育館が全壊することはなく、多くの住民が避難できた。
 
 学習を指導した寺尾邦義さん(80)もその一人。「9月に被災して、次の年の1月まで体育館にいた記憶がある。自分が管理人となり、食料を配分したり水の問題を考えたりした」。発表前の事前学習で、長期にわたる避難生活で不便に思ったことを伝えると、孫世代の後輩たちは全てにおいて完璧な対案を用意してきた。「これなら、災害が来てもやっていけそうだ」と安どの笑みを浮かべた。
 
 
■風化は私たちが止める
 
 現在の2年生は大水害後に生まれた最初の世代となる。向井るなさんは「経験者から大切なことを学んだ。親はあまり話したがらないが、大変な事態だったとは知っている。自分たちがアイデアを出すことで、地域を助けたい」と自覚を述べた。〝災害を知らない子どもたち〟とは言わせない—。向井さんたちの目がそう語っている。

      紀宝町

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