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紀南抄「人と人材」

 教育は、だんだんと「人」よりも「人材」を育てる方向にいっているような気がする。

 国の中央教育審議会の各種答申を見ていても、学校教育では社会で活躍できる人材の育成を進める、といった趣旨の内容が見受けられる。

 「材」とは資源。経済では、企業経営に必要な「ヒト・モノ・カネ・情報」をまとめて「経営資源」と言ったりする。経済活動の文脈では、人間とその能力や技術はモノ・カネ・情報と同様に、消費可能な資源である。

 資本主義社会にあって、人材の育成が急務になるのは当然だし、それを止めるべきとも思わない。ただ、その比重が大きくなってきた時に、子どもたちは自分を見つめる時間が減るのではないだろうかと、若干の危惧を抱いている。

 人材教育は、自分という人間をいかに社会に発露させていくかという外向きの考えである。一方で、自分が好きなものは何か、何に幸せを感じるか、何が大切かという、内向きの思考も大切だと思う。

 経済が伸びると共に幸せを見失うのでは、どこかおかしい。内の幹が大きくなるから外に枝葉を広げられるのだと信ずるところである。

【稜】

      紀南紗

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