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紀南抄「シンギュラリティ」

 AIの知性が人間を上回る転換点を「シンギュラリティ(技術的特異点)」という。仮にその転換が今後訪れるとすれば、これからの人間に大切なのは知性と別軸の感性的な判断基準ではないだろうか。

 東京のIT系の職種の友人と話していて、新聞記者の仕事はAIでどのように置き換えられるかという話になった。アルゴリズムを組めば、必要な情報の入力で「紀南新聞っぽい」記事は出せるという。

 私はその論に対し、「取材」「行政のチェック」という武器で反撃。現在のAIは将棋のように、過去の情報をもとに枝分かれした選択肢から最適解に近いものを瞬時にはじき出す能力にたけている。しかし取材による一次情報の入手はやはり記者に軍配が上がる。行政のチェックについては、何が妥当かを一義的には図れない。住民感情や人間関係などの複雑な要素の検討は人に分がある。

 意味のありそうなことの「中庸」を得意とするAIが台頭すれば、人は、意味はないけど感情が働くというような「周辺」に人間性を見出すだろう。その時の社会で鍵を握るのはローカル、つまり熊野である。

【稜】

      紀南紗

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