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紀南抄「花」

 自然からはいろんなことを教わる。

 例えば植物。土に種がまかれ、十分な栄養と水によって芽が出て、成長し枝葉を広げ、つぼみができて花を咲かせ、散って実がなり、枯れて倒れると腐って土となり、そこにまた新しい芽が出る。当たり前すぎるほど普遍的な循環だ。

 記者としてこの真理を参照するなら、一つの記事完成までが小さな循環といえる。種は人脈や情報源の確保など、情報収集全般。人脈で言えばきちんとあいさつをして礼儀を尽くすなどといったことが水や栄養になる。十分にそれらを与えると、突然「こういうの面白いと思うんだけど」などと情報が出てくる。芽だ。そこにその情報の価値やニュース性を付け加えると自然と成長し、取材を経て記事になることで人の目に触れる花となる。取材後は新しい関係性などができ、また新たな芽につながる。

 記者のみでなくさまざまな循環する出来事に当てはめられることだ。これをわざわざ考えるのは、当たり前なことほど忘れてしまうからである。本質が必ず大事とは限らないが、あらゆる答えはいろんな当たり前の中にあるのだろうと、春に咲く花々を見ていて思う。

【稜】

      紀南紗

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