紀北町で、新型コロナワクチン接種の副反応と見られる症状での死亡が１件認定された。８月４日時点で全国で１３９件が認定を受けており、そのうちの１件がこの小さな町で起こった。

 

　担当職員への取材で、高齢者や既往歴の有無は個人の特定につながらず町民への安心に寄与すると伝えたが、「憶測を生みかねない」と一切の情報を出さなかった方針は理解できる。個人情報保護法では死者の情報は保護の対象とならないが、遺族に関する情報もあれば保護の対象になり得る。まず法理以前に、困っている人や苦しんだ人への配慮が優先されるのは、社会としてあるべき姿だろう。

 

　闘病体験や医療のひっ迫を聞けばコロナは危険だし、商店や一次生産者の苦労を思えば経済を活性化していくべき、と感じる。現実に魔法はなく、都合のよい答えは見えない。「政治は妥協の産物で、可能性の芸術である」は鉄血宰相ビスマルクの言葉。よく考えてしっかりと話し合うことでベターを積み重ねていくことが、よい町やよい社会につながっていく。

 

　（Ｒ）