作家の伊吹有喜さんのおわせ観光大使の委嘱式があった。市役所には、阪神の湯浅京己投手が来たばかりで、この2人は全国で活躍する尾鷲市出身者の文武の粋と言える。
伊吹さんは戦中戦後の尾鷲を舞台とする小説『灯りの島』を連載している。海軍熊野灘部隊の奮戦と犠牲、三田火力発電所の建設など、尾鷲を舞台に戦争の絶望から再生していく昭和の時代を書いていくという。尾鷲に生きる者としては、聞いているだけでわくわくする。
物語ではおそらく再生の象徴の一つとして取り上げられるであろう三田火力発電所も今はない。跡地を活用するおわせSEAモデルは尾鷲再生の切り札と目されているが、津波浸水域の活用はどうしても選択肢が限られる。箱物建設と企業誘致による地域おこしは現在でも可能なのか。時代は移り変わったが、それに適応する地域活性化策は未だに見えないままだ。
過疎化が進む中、このまちで育った若者が大阪では熱狂的な声援を受けて奮戦し、東京では尾鷲を舞台に名作を書こうとする作家がいることは希望となっている。人を育て、そこから学ぶことによってまちを活性化するような仕組みはつくれないか。
(R)