人口減少が続く当地域は、これまで以上に観光産業で経済活性化を図る必要がある。コロナ禍明け以降、観光客数はインバウンド含めて堅調で、世界遺産登録20周年だった昨年も大勢が訪れた。一方で、多様化するニーズに応えるためには観光素材のブラッシュアップ(磨き上げ)や、地域の特性を生かした新たな体験モデルの構築が求められる。
熊野市が同市金山町に2029年度のオープンを目指す熊野アグリパーク。大型農業関連施設で「地域活性化に向けたものづくり体験・学びの提供」をコンセプトに、周囲の樹林や地形を生かして水と緑の景観を配置した観光集客施設を整備する。無料・有料・宿泊の3エリアに分けて、無料エリアにはファーマーズマーケットや子ども向け屋内遊具施設など、有料エリアにはチョコレート・パン・コーヒー・菓子工房・体験教室・動物とのふれあい体験施設・レストランなど、宿泊エリアには30棟の宿泊棟を建設予定。地元客も観光客も楽しめる拠点を目指す。同市は「高速道路の延伸により紀伊半島を訪れる観光客のせき止め効果を図り、同市内全体の宿泊や販売促進につなげたい」としている。
民間ロケット「カイロス」の発射場がある串本町に、宇宙を楽しく学ぶ体験型施設が今年4月にオープンした。同町の旧古座庁舎をリニューアルしたもので、ロケットの打ち上げの迫力を間近で感じるイメージビジョン「ロケットタワー」や、宇宙飛行士のユニフォームをデジタル画像で疑似装着する「スペースワーカー」、最新技術を駆使した高精細な8K映像とダイナミックなサウンドシステムでロケットの打ち上げや串本町の美しい自然を前進で体感できる「スペースシアター」など多彩なコーナーを設置。「本州最南端ロケットの町」を冠に売り込みを図っている。
これらは地域の特性を存分に生かした取り組みで、当地域の観光の大きな起爆剤になる。地元住民も楽しめる施設なのが良く、その分、宣伝効果が高まり、まちの拠点機能としての周知にもつながる。他の自治体でも今ある素材を見直し、アイデアと工夫を施すことで観光交流拠点に生まれ変わるものもあるだろう。何もしなければ飽きられてしまう。危機感をもって取り組んでもらいたい。