これから迎える冬場に注意しなければならないのが、高齢者の入浴中に起こりやすい「ヒートショック」。暖かい部屋から寒い部屋に移動した際、急激な温度差によって血圧が急激に変化することにより心臓に負担がかかり、失神や脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす現象のことだが、最悪の場合は死に至る。入浴中に亡くなる人は全国で年間1万7000人と推計されるが、その多くがヒートショックによるものと見られている。新宮保健所管内(新宮市・東牟婁郡)でも亡くなる人が出ている。
一般的にヒートショックの危険性が高まるのは、10度以上の温度差があるときとされている。持病や前兆がなくても起こるおそれがあり、暖房で温めた部屋から気温の低い脱衣所や浴室に移動した際や、風呂上がりの温まった体の状態で脱衣所に出た際などが危険。
対応策としては、
- 脱衣所に簡易的な暖房器具を置いてあらかじめ暖める
- 入浴直前にシャワーで湯をためたり、浴槽のふたを開けておいたりして浴室を暖める
- 浴槽に入る前に手足などの先端からかけ湯をして少しずつ体を温める
—など。また、同居家族がいる場合は、入浴前に一声かけることや、高齢者は入浴の順番で一番を避けるなども有効な対策となる。一方で、食後すぐや飲酒後の入浴は避ける。
ヒートショックという言葉は聞きなれず、対応策もまだまだ浸透していない。新宮保健所の和田安彦所長は、予防に力を入れることでヒートショックによる犠牲は減らすことができると話す。また、高齢者だけでなくすべての世代で注意する必要性も指摘。若い人でも急激な温度変化で血管に負担をかけるようなことは避け、入浴は毎日のことなので、若い頃から生活習慣を見直すことが大切だとする。併せて、脱衣所に断熱材を入れるなど住環境を整えていくことも対策の一つになる。
当地方は高齢化が特に進んでおり、リスクは高いといえる。同居家族がいれば注意を払うことができるが、一人暮らしの場合、自分が意識して気を付けなければ、万一のことがあってもすぐに発見してもらうことは難しい。田辺市ではホームページでヒートショックについての説明と注意点を分かりやすく上げている。日本気象協会のホームページでは地域ごとの「ヒートショック予報」によりリスクの目安が分かる。自己防衛はもちろんだが、犠牲者を出さないために、各自治体などはさまざまな機会を捉えて広報啓発していくことが必要ではないか。