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社説「『きのくに線』活性化へ模索続けて」

 JR西日本の長距離観光列車「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」紀南コース3年目の運行が今月3日で終了した。昨年9月から新宮−京都間を週2往復、計36往復し、約4500人が利用。コロナ禍が明けたこともあり、乗客数は2年目運行の約1.5倍にのぼった。地元では4年目の運行への期待も高まるが、他地域でも運行要望がある兼ね合いでまだ決まっていない。

 JR西日本は今回の好結果について、沿線自治体などで構成する「WEST EXPRESS銀河受入協議会」を中心とした地元のおもてなしが最も大きな要因と感謝する。発着駅の新宮駅では機会を捉えてイベントを打ち、近大附属新宮高校中学校と新宮市立緑丘中学校の各吹奏楽部、同光洋中学校音楽部の合同演奏も実現するなど、利用客だけでなく、歓送迎に訪れた地元住民も楽しめるものが多かった。次年度以降も運行が続くのであれば、住民を巻き込んだイベントを数多く開催することで、銀河のおもてなしはもちろん、列車利用への関心が高まる機会になるのではないか。
 
 JR西日本が昨年11月に公表した不採算路線の経営状況によると、1キロあたりの一日平均乗客数が2000人未満のローカル線17路線の昨年度までの3年間の平均収支で、きのくに線の新宮−白浜間の費用に対する収支の割合「収支率」は年々悪化し、3年間の平均は11.9%だった。2022年度の同区間の一日平均の乗客数は793人で、国鉄からJRに運営が移行した1987年度の4123人と比べると5分の1以下にまで減少している。営業費用が32億4000万円に対し、平均運輸収入は3億9000万円で、28億5000万円の赤字となった。
 
 和歌山県は、一部区間を恣意(しい)的に設定して不採算の問題を提起したことに首をかしげながらも、路線の維持に向け沿線市町村と連携した利用促進を図る姿勢を示している。当地方にとっては通勤・通学、観光客の輸送になくてはならない路線であることは明白。利用促進の検討は以前からされているが、県や市町村職員の和歌山市等への出張の際は基本的に列車を利用するなど、小さなことからでも実行に移し、続けていくことが大切ではないか。
 
 銀河をはじめ、今年は世界遺産登録20周年、来年は大阪・関西万博の開催と"追い風"となる好機が続く。この機会を逃すことなく、きのくに線の活性化を目指した取り組みが進むことに期待したい。
 

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