宇宙事業会社「スペースワン」(東京)が13日に串本町田原の発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げた小型ロケット「カイロス」初号機は、何らかの異常によって作動する「自律安全飛行」技術により、発射約5秒後に爆発。成功とはいかなかったが、豊田正和代表取締役社長は同日午後の会見で「スペースワンとしては『失敗』という言葉は使わない。一つ一つの試みの中に新しいデータ・経験があり、全てが新しい挑戦への糧」と力を込め、原因究明と再発防止を急ぐ姿勢を示した。一方、地元での観客受け入れは順調に行われた。
2018年発足の同社は、当初2021年度中としていた初号機の打ち上げを4回延期し、今月の打ち上げにこぎ着けた。9日、ようやく発射と思った矢先に海上警戒区域での船舶残留で延期となり、計5回の延期の末、13日にリフト・オフするも、今回の結果となった。
地元の受け入れ態勢としては、大きな混乱やトラブルもなく、スペースポート紀伊周辺地域協議会事務局は「皆さんマナーがよく、ご協力いただいた。交通渋滞も発生せず、想定通りに運営できた」とした。地元関係者の助力は大きかっただろう。
今後の課題としては、トイレに長蛇の列ができたことや、見学場内の会場案内がわかりづらいこと、山の奥からのロケット打ち上がり位置が不明瞭だった点、飲食物販売の強化などが挙げられる。特に、新宮市でのパブリックビューイングも地元としては期待したい。
打ち上げ失敗について、公式見学場に来ていた地元関係者や見学者からは「残念」の声が多く聞かれた。串本町が発射場に選定されたのは2019年3月。それから丸5年間、延期の言葉を聞き続け、“焦らされた”感があったことは否めない。それだけに当日の期待感は計り知れないものがあっただろう。
一方で、「次に期待」の声も同様に聞かれた。世界では現在、宇宙事業の官から民への移行によるロケット打ち上げ競争が拡大している。快進撃を続けるスペースX社(アメリカ)も、最初の打ち上げからラストチャンスの4回目でようやく成功させた。小型ロケットで先を行くロケット・ラボ社(アメリカ)も最初のミッションには失敗し、次の年に3機を打ち上げている。
豊田社長は「次にミッションを達成することが本当の意味での地元への貢献」として、前を見据えた。地元としても、カイロスを見上げる日が必ず訪れると期待して、辛抱強く応援を続ける姿勢が求められる。