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社説「打ち上げ間近 交通・防犯も注視」

 串本町田原の民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」で3月9日(土)、初号機が打ち上げられる。度重なる延期を乗り越え、地元も待望した打ち上げが間もなくとなり、全国各地から訪れる見物客の受け入れに向け、和歌山県や地元自治体などでつくる「スペースポート紀伊周辺地域協議会」は最後の準備を進めている。

 田原海水浴場と旧浦神小学校にそれぞれ2500枚ずつ用意した公式見学場のチケットは、1月29日の販売開始から2日間で完売した。これに呼応して、串本町や那智勝浦町の宿泊施設では、打ち上げ前日の8日の宿泊が予約でほぼ満室。列車やバスなど公共交通機関を利用して訪れる人も多く見込まれ、地元飲食店や土産店の繁忙も期待できるなど、地元経済への効果は大きい。

 一方で、狭い場所に大勢が集まるイベントのため、雑踏や交通事故の防止へ警備面に注力しなければならない。見学場にはチケットがないと入場できないが、周辺から見ようと集まることが考えられる。同協議会では、県警と連携し、公式見学場の前後1キロの国道42号を駐停車禁止とし、その先2キロも駐車禁止とすることを発表した。幹線道路の電光掲示板や地元自治体の各種広報を使って当日まで、繰り返し周知する必要がある。当日は周辺道路の渋滞が予想される。脇見運転が思わぬ事故につながることから、ドライバーは規制に従い安全運転に努めてもらいたい。

 また、防犯面でも注意が必要。ロケット打ち上げに気を取られているうちに、空き巣や車上荒らしの被害に遭わないとも限らない。田原や浦神など顔見知りが多い集落では、日中は自宅の施錠をしないという家庭も意外に多い。当日は要所に警備員が配置されるが、1本路地を入れば死角になる場所もある。この日ばかりは他所から不特定多数の人が出入りするため、必ず施錠し自己防衛に努めることが被害防止につながる。

 初号機の打ち上げが成功すれば、弾みがついて次回の打ち上げ予定も立ちやすく、事業者が示す2020年代半ばごろまでに年間20基という目標も現実味を帯びる。「本州最南端のまちからロケット最先端のまちへ」をキャッチフレーズに掲げる串本町、生マグロに温泉、世界遺産にロケットを加えることができる那智勝浦町。共に未来は広がる。まずは打ち上げの成功を願いながら、今回の打ち上げを踏まえて今後の観光施策に磨きをかけてもらいたい。

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