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社説「訪問介護の将来のために」

 訪問介護事業所が悲鳴を上げている。紀宝・御浜・熊野の3市町の民間の介護保険事業所で組織する紀南ケアネットが先日、訪問介護員(ヘルパー)の高齢化などによる人手不足のため、訪問介護の依頼に応えられない現実があるとして、行政機関に対し、人材確保の支援を求めることを発表した。

 高齢化の進展が年々進み、65歳以上の高齢者が高齢者を介護する「老老介護」は当たり前、75歳以上の後期高齢者による「超老老介護」も珍しくなくなっている。全国を見れば、介護疲れが要因と見られる不幸な事件もたびたび報道される。年老いても健康でいきいきとした生活を送るのは誰しもの願いで、それを支援するために介護保険制度が始まった。
 
 本来、等しいはずである行政サービスだが、医療同様、介護保険でも地方、特にへき地は格差を感じざるを得ない。冒頭の民間事業所はこの格差をできるだけ生まないよう、最大限の努力をしているが、それも限界を超えているという。
 
 紀南ケアネットによると、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに行った調査結果で、「訪問介護の依頼に応えられない」と感じたことが過去1年間にあったという人が8割強もいた。熊野市の山間部や海岸部など市街地から離れた地域への移動時間とそのための費用負担が大きいこと、土・日曜日や早朝・夜間のヘルパーが少なくこの時間帯の訪問が難しいこと、一日複数回の訪問依頼への対応が困難なことなど、さまざまな理由があった。中でも深刻な問題は、ヘルパーの高齢化と新たな人材の補充が進まないこと。構成する事業所では、令和2年10月の調査で、60歳以上の職員が4割以上を占め、さらに高齢化は進んでいることから、いつまで事業が継続できるかといった不安を抱えながら、やりくりしている状況だ。それでも続けられるのは、利用者や家族の感謝の声に救われ、仕事に誇りをもっていることだという。
 
 国民から徴収した保険料で運営する介護保険サービスに対し、行政機関が現状を理解したうえで、人材確保のために必要な支援を講じなければ、現場の不安通り、この地域での訪問介護サービスが成り立たなくなってしまう。知恵を絞り、アクションを起こしてもらいたい。
 

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