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社説「祭り継承へ 在り方考える時期」

 朝晩は涼しさを感じるようになってきた。そろそろ各地で秋まつりが行われる時期だ。コロナ禍で3年連続中止にした地域、規模縮小ながら実施する地域、3年ぶりに本来の形に戻す地域、それぞれ違いはあるが、どの選択も尊重されるべきだろう。

 祭りは地域の特色を表し、旗印の役目も果たす。獅子舞や踊りなど郷土芸能の発表の場でもあり、子どもから高齢者まで一体となって楽しめる。同じ獅子舞でも地域によって違いがあり、その違いが分かれば見物していておもしろい。

 華やかな舞台の裏側では、祭りの運営や伝統芸能の継承に苦労している地域も少なくない。人口減少と少子高齢化の進展は、地域のコミュニティーにも暗い影を落としている。ある地域の世話人の一人は「今は50代でも若手と言われる。若い世代の参加が年々難しくなり、将来が心配」と不安な気持ちを明かす。別の地域の世話人は「自分たち(50代)は子どもの頃から祭りと共に育ち、大きくなったら自分たちが獅子舞を当然やるものだと思っていた」と話す。新宮市内の小学校はかつて、地域の祭りの日は午後から休校にするなど、参加しやすい環境だったが、今は違う。

 運営側も祭典日程について、できる限り参加・見物してもらいやすいよう、神事以外の神輿(みこし)渡御や芸能披露などは休日に実施するなど変化を見せており、それが功を奏している地域は多い。一方で、大きな神社の例大祭や、祭りそのものが国の重要無形民俗文化財に指定されているような場合、日程変更は容易ではない。しかし、次世代への継承を考えると、祭りの在り方について考える時期に来ているのではないか。これまで通りの方法で人を集めたり、奉仕を呼び掛けたりするのは年々難しくなるだろう。

 祭りを通して多様な人々が交わることは、災害など非常時の対応力を高め、助け合いを生むことにつながる。地域の祭りはこれまでも人をつなぐ場だった。できる限りその輪を広げ、コミュニティーを維持したい。若者が地域で活躍し、祭りの担い手にもなれば。祭り継承の課題は一つの地域で解決するものではない。若者が地元に残れるよう、企業誘致や雇用創出の面で行政にも汗をかいてもらいたい。

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