コロナ禍で困窮する市民生活や地域経済を支援するための施策で代表的なものに、プレミアム付き商品券がある。新宮市は7月から、昨年同様に40%上乗せした商品券(1冊7000円分を5000円で販売。市民1人につき2冊まで購入可能)を販売する。コロナ禍支援の目的を達成するためには、できる限り売れるよう努力しなければならない。
先日、大分県佐伯市で1人3万円分までに限定されていたプレミアム付き商品券を、1人で440万円分購入したことが報道された。発行した6万冊のうち3分の1以上が売れ残ったため、事前申し込みなしで再販売。これを受け、この人物が車の購入名目に大量購入を申し出たところ、販売を委託した事業者からスタッフに誤った指示があり、申し出通りの冊数を販売した。賛否両論あるようだが、結果を見れば、商品券の売れ残り分が減り、経済活動に回るお金が増えた。批判されるべきは購入者ではなく十分に周知しなかった当局では。
新宮市のコロナ禍の商品券事業は一昨年に初めて実施。購入率が62%と思ったほど伸びなかったため、使用できる店舗の枠を量販店にも広げ、「地元店舗限定店」と「全店舗共通券」を半分ずつ(3500円分ずつ)販売するよう改善した。昨年の最終的な購入率は67%で、発行金額は約2億5900万円だった。数字だけ見ると微増だが、市の担当課では、個人商店主からは新規顧客獲得につながったことや、1人あたりの購入量・金額が増えたといった声が寄せられたことを踏まえ、今年も同様の形としたと説明する。
売るための努力として、まずは継続的な周知が必要。昨年も市広報紙や回覧板などで繰り返し周知したが、出だしは好調だったものの、その後は伸び悩んだ。各店舗に購入を誘うようなチラシやポップを掲示してもらうなど、一工夫加えてはどうか。
また、状況に応じた柔軟な対応も求めたい。先述の佐伯市の事例を見ても、制限を解除すれば購入したい人は出てくる。売れ残れば用意した商品券が無駄になる。新宮市の商品券には特種な加工もされており、印刷代も安くない。市民の税金を無駄にしないことと、経済を活性化させるという当初の目的を考えると、ある程度の段階で購入制限をなくしてもいいのではないか。タイミングが早すぎると買い占めにつながることから、慎重に判断しなければならないが、購入率100%に少しでも近づけられるよう、当局は制度設計の見直しを視野に入れておいてもらいたい。