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社説「民間意識をもった運営を」

 丹鶴ホール(文化複合施設)を巡っては、建設場所や設計などで大論争、予定地から出土した遺跡の取り扱いも含め、推進派と慎重派に二分する事態に。新宮市政の歴史上初めてと言っていい、議会で予算等の審議が夜中まで続くなど前途多難だった。

 旧新宮市民会館が閉館となり丸5年以上が経過した。この間、文化的な発表は近隣市町のホールを利用、あるいは発表を中止。昨年からはコロナ禍で自粛になるなどしている。そんな市民にとって待望の丹鶴ホールは6月末で建物本体の工事が終わり、現在は入り口や駐車場などの外構工事が進んでいる。並行して館内の備品搬入が8月下旬まで続き、その後、市民向けの内覧会開催を経て、10月3日にオープンする。旧市民会館がそうだったように、丹鶴ホールもこれから新宮市の文化を育む場として、さまざまな歴史を刻んでいくことに期待したい。
 
 国の有利な交付金を得たとはいえ、全体事業費約63億円のうち、市の実質負担分も約16億円ある。これは建設にかけたお金で、今後は毎年かかるランニングコストを意識しながら運営していかなければならない。現在の試算では、館内設備の保守料金や清掃・警備・舞台技術スタッフの委託料金、水道光熱費など年間1億3200万円の支出と試算。対して貸館収入と自主事業のチケット販売合わせて2500万円を見込み、収支差額1億700万円の税金が必要になると予想し、現場担当の職員はできる限り支出を抑えるよう奔走している。
 
 10月のオープン以降、1年間をオープニングイヤーとして市はさまざまな自主事業を企画。ホールの稼働率は、平日22.6%、休日52.6%、全体では33.9%を目標。つまり3日に1回ペースの利用が必要で、これをできる限り伸ばすことがランニングコストの抑制につながる。市が運営するが、民間意識をもった運営が求められる。
 
 また、図書館についても、和歌山市や田辺市など県内他市の図書館新設時のデータから、少なくとも現状の3倍以上の利用があると見込んでおり、限られた職員数でのサービス充実や、安全面への対応が課題。図書館を最上階に配置したことで、子どもだけの利用時の防犯面について心配する声が当初からあるが、エレベーターを含め館内要所に防犯カメラを設置するなど配慮した。
 
 多額の税金を使って建設した施設。専門家にアドバイスを求めたり、他施設の成功事例をもっと参考にしたり、市民(利用者)の声を聞いたりしながら知恵を絞ってほしい。そして、丹鶴ホールが、市民の、特に子どもたちの文化力向上につながる施設になればと期待したい。
 

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