尾鷲市三木里町の旧三木里小学校講堂で16日、小学校の耐震化に向けた学習会が開かれた。住民約20人が一級建築士で文化財建造物修理主任技術者でもある兼弘彰さんの話を聞き、意見交換した。
地区会の取り組み。三木里地区では、愛知工業大学や明治大学などと連携して「逃げ地図」づくりをはじめ地区の防災力向上の取り組みを進めている。この日は、愛知工大工学部建築学科の益尾孝祐准教授や大学院生らも参加。これまでの取り組みを振り返りつつ、今では珍しくなった木造の学校校舎を保全して活用することについて話し合った。
現在残る旧三木里小校舎は昭和31年から33年にかけて整備された。収容避難所になっているが、耐震化がされていないという問題がある。一方、全国的に木造校舎が無くなっており、益尾准教授は「登録有形文化財を目指せる」との認識を示す。
兼弘さんは、文化財の建物に一切手を入れてはいけないということではないと指摘。修理や補強について、木造の骨組みを生かしながら鉄骨を使う方法や、外観には手を入れず内部に鉄骨を入れる方法、高耐力面格子という軸組み工法の補強方法などの手法を具体例を示しながら説明。将来、どこに手を入れたかが分かることや、本体部分に触れずに改修部分が分離できるなど「文化財としての価値を保った補強が求められる」と述べた。
校舎については、造形的にも素晴らしいとの認識を示し、仮に保存するなら創建当初の形で残したいと語った。
文化財の仕組みや利用するには保全活動計画が必要であること、登録有形文化財になれば、条件によって補修に最大6割の国の補助があり、都道府県によっては残りの部分にも助成が考えられると説明した上で、「どのくらいの安全性にすることを、どれくらいの予算を掛けてやるかを決めることがまず大事」と説明した。
本年度は、避難対策のための空き家調査と小学校の活用についての検討を行うという。
市が耐震保全のための支出に積極的でないことに不満の声を上げる住民もいた。