今年は祖母の初盆だった。優しく笑う温和な人だった。家柄、盆という行事を強くするような環境ではなかったし、今回も正直、そこまで強くそれと意識して過ごしていたわけではなかった。しかしふと思い出す。あの柔和な表情が今もどこかで見守っていて、きっと何か良からぬものやつまらぬ選択から自分を保護してくれているのではないかと、天とも空ともわからぬ上を見たりする。
各地で花火大会があった。今年は那智勝浦、新宮、熊野と巡ることができた。胸に響くあの「ドン」という音が今も体に残っているようである。
その音は、自分にとってすごく大切なものに感じられた。まるでまばゆく咲き刹那のうちに移ろってゆくあの大輪と、地べたでじっと見上げるしかない自分とをつなげてくれるような、そんな心持ちがしたからだ。
すべてのものが移ろってゆく。生まれ、育ち、老いて、還ってゆく。あの柔らかい手も、きらりとした瞳も、力強かった日々も、あぶくのようである。その中に身を置き、今この瞬間を近しい人と分かち合えることが有り難い。そんな初盆も、もう移ろった。
【稜】
