ネイティブインディアンは自分たちの歴史や祈願をトーテムポールに祭る。トーテムポールは長い時間をかけてその土地に根付き、やがて朽ちて大地に還っていく。大いなる循環の中に、人の祈りを融合させていったのだ。
人は、なぜ熊野古道に魅力を感じるのだろうか。言ってしまえば、メインは熊野三山をはじめとする霊場であり、道はそれまでの課程。しかし、世界遺産は紀伊山地の霊場と参詣“道”。今も多くの人が歩きに来る。
熊野も、ありえないほどにむき出しの自然信仰をありのまま残している。日本各地に自然はあれど、どこか人によって管理されている部分が拭えないのだが、熊野の自然はその支配から逃れたところが残っている。ずっといるとわからなくなるのだが、ふと外へ出て自然を探すと、改めてその事実に感動する。
自然と人を結ぶのが信仰なら、自然信仰と都市を結んだのが道、熊野古道だ。そこにはインディアンのように、自然に融合する形で祈りを込めた人々の「熊野へ行きたい」という強い願いが現存している。自然の美しさと同じくらい、人々の純粋な願いにも感動する。
【稜】
