2021年1月から運行休止中の瀞峡ウオータージェット船の最後の5隻が、間もなく解体されることが決まった。いよいよ本当の終わりに近づいているようで、すごく寂しくて悲しい。
熊野川町に祖父母の家があり、夏になると目の前の北山川でいつも泳いでいた。メダカを獲ったり係留していた川舟の上で遊んだりしたが、私にとってとびきり楽しい一大イベントがあった。それがジェット船の通過だった。
遠くから徐々に近づいてくるエンジン音。間もなくオレンジ色の旗が見える。「ジェット船来たで!」と、急いで川に入って妹と待機。通ったあとに発生する波を楽しみにしていたのだ。スピードを落としてくれる運転手もいて、たくさんの乗客に手を振りながら、何度も押し寄せる波に揺られた。
一度だけ母にせがんで、ジェット船に乗ったことがある。憧れの船中からの眺めは楽しく、祖父母の家やいつも泳いでいる川原に興奮した。川面を堂々と走り抜けるジェット船の姿を見ることはもう叶わなさそうだが、子どものころの夏の思い出はずっと色褪せることはない。
【織】