太地町立くじらの博物館のマダライルカの赤ちゃん「マナ」が25日、1歳の誕生日を迎えた。神経質な種で飼育が難しく、繁殖個体が1年も生きているのは国内でも最長の記録というのはニュース性が高い話だが、個人的にはこの1年間で何度も取材させていただいたこともあり、先日の誕生日会では胸にこみ上げるものがあった。
出産にかかった時間が21分という異例の速さで生まれてきたマナ。感染症などで出産5か月後と8か月後の2回、命が危ない時があった。本紙の今年の正月号でもマダライルカの赤ちゃん出産を取り上げさせてもらったが、年を無事に越えられるかどうかわからず、エサに全然食いつかない様子を見たときには、ドキドキした。それが1歳の誕生日には、元気に食いつき、泳ぎ回っていた。稲森館長の「色々ありました」という言葉、担当飼育員の平松さんの「特別な思いのある1歳の誕生日」という言葉とその表情の向こうには、筆舌に尽くしがたい日々があったのだろうと想像する。
与えられた命を生きる。美しいという言葉はこういう時に使うのだろう。マナを見てそう思った。
【稜】