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紀南抄「春を告げる本宮祭」

 毎朝出勤して最初にするのは、パソコンのスイッチを入れることだ。この立ち上げの時間が好きである。「ウィーン」という静かな起動音とともに、自分のギアも少しずつ上がっていく感じがする。待ち受け画面に切り替わると朝一番のスイッチが入る。
 
 熊野本宮大社例大祭「本宮祭」を前に縁起物の挑花づくりが行われ、3日、敬神婦人会によって約600本が完成した。ここ3年間はコロナ禍でどこの神社も、祭りの規模縮小を余儀なくされてきた。同大社も例にもれず、参列の制限や神輿(みこし)も一部出さないなど、感染対策、もとい人々の健康を第一に、苦渋の決断を3年間続けてきた。
 
 そんな中で今年、ようやく本宮祭は従来通りの規模で斎行。稚児は元通り12人参加、神輿も全て出し、渡御には総勢約300人が参列するという。
 
 熊野の起動音が聞こえる。この例大祭が従来の規模で行われることは、周辺地域の神社での祭り開催の一つの指標になり得るのではないか。盛大なお祭りが、信仰のみならず停滞した経済や人々の活動の一つのスイッチとなり、熊野に“春”を告げることを願う。
 
【稜】

      紀南紗

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