最近、太地町に訪れることが多い。燈明崎や梶取崎など風光明媚な場所が点在する。実は太地町と大阪にはクジラにまつわる興味深い接点がある。
大阪にはたいへん珍しい橋がある。どうして珍しいかといえば、その橋はクジラの骨でできているからだ。大阪市東淀川区の瑞光寺という寺にその橋がある。なぜクジラの骨なのか。
1754(宝暦4)年、当寺の潭住(たんじゅう)禅師が紀伊国(和歌山県)の太地を訪れたとき、漁民たちはクジラが不漁で、たいへん困っていた。そこで覚右衛門村長が潭住に豊漁祈願を依頼した。殺生は五戒の一つであると断っていた潭住も、苦しんでいる漁民を見かね、豊漁を祈願したところ、一夜にしてたくさんのクジラがとれた。そこで漁民たちは潭住にクジラの骨とお金を贈った。
それでつくったのがその橋の起源である。橋板から欄干まですべてクジラの骨でつくられ、その骨の雪のような白さから「雪鯨橋」(せつげいきょう)と名づけられた。
現在のものは6代目で、橋板は石になったが、欄干にはクジラの骨が使われている。雪鯨橋はクジラ橋とも呼ばれている。
【茂】