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紀南抄「桜の開花 天国で喜ぶ」

 今年は例年に比べて桜の開花が遅れ、子どもたちの入学を祝うかのように今まさに満開という箇所が多い。9日未明の雨で散ってしまった可能性も否定できないが、新宮城跡では夜桜観賞用のライトアップがまだ行われており、しばらくは楽しめそうだ。

 新宮市熊野川町の相須地区、熊野川河川敷の近くに咲く一本のソメイヨシノ。2011年9月の紀伊半島大水害による熊野川の氾濫を耐えて1本だけ残った桜として知られる。管理していた平岩明さんが自ら「平岩桜」と名付け、毎年開花を楽しみにしていた。何度か取材させてもっらたことがあり、新聞に載ったことで遠くから見物に来てくれる人もいたと喜んでくれたことが印象に残っている。

 その平岩さんは昨年7月に亡くなったが、今年の開花状況を確認しようと先週、現場を訪れた。平岩さんの妻・アツ子さんは例年より遅れて満開となった平岩桜に安どの表情を浮かべ、遺影に向かい「お父さん、今年も立派に咲いてくれました」と笑顔で語り掛けていた。平岩さんも天国できっと喜んでいるだろう。当方も勇気をもらった。

【F】

      紀南紗

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