友達、恋人、夫婦、親子、家族、同僚、先輩・後輩、上司・部下、親友、ライバル、知り合い、"よっとも"、恋敵、政敵・・・。人間関係には、さまざまな名前がある。面白いのは、その呼び方の持つ"引力"とも言える不思議な力が、実際の関係性に影響を及ぼし、時に強固に、時にちぐはぐにしてしまう。
小学生の時、「俺たち、親友だよね」と言われたことがあった。人間関係に名前を付けることを考えていなかった私は、「親友とは何なのだろう」と考え、答えをちゅうちょしてしまった。言葉を詰まらせた私を友人は鋭く見止め、「違うんだ。ならもういい」と言って、その場を去っていった。戸惑いの内容さえ言葉にできなかった私と彼の関係はその後、ちぐはぐになってしまった。
例えばそこで「親友だよ」と迷いなく答えられていれば、現在も関係は良好だったかもしれない。彼にとっては、親友とは何かより、親友という呼称で互いを認め合えることが大事だったのだ。呼び方が関係を作り、関係が呼び方を作る。とにかく大切だと思う相手には、戸惑いも含めて言葉を尽くすことが肝要だ。
【稜】