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紀南抄「お荷物から救世主へ」

 花粉症によって一大産業として成長した柑橘がある。日本唯一の飛び地の北山村でしか取れないフルーツ「ジャバラ」がそれである。ジャバラは村に暮らす村民の敷地に1本だけ自生する自然雑種だった。

 のちに、花の分析などを行い、調査・研究した結果、日本国内のみならず、世界中を探しても、全く同じものはほかにひとつとしてない、新しい品種であることが明らかになった。以来、村の人々はジャバラの木を排除することなく、大切に育てあげてきた。

 昭和50年代から「北山村の過疎化対策」として、ジャバラ事業に取り組むが、知名度が低く、販路拡大には至らず、「お荷物産業」と呼ばれるように。IT時代の到来を背景に物理的距離のハンデを逆手に取り、インターネット販売に舵を切る。すると、インターネット上で、「ジャバラが花粉症に効く」という口コミがじわじわと広がる。

 和歌山県工業技術センター、岐阜大学医学部が相次いで研究結果を発表。人気に火がついたという。今や5億円に及ぶ村の主力産業に。お荷物とされたジャバラは救世主へと変貌を遂げた。

【茂】

      紀南紗

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