「夏草や 兵どもが 夢の跡」は松尾芭蕉が奥州平泉で詠んだ一句。奥州藤原氏が栄華を極め、鎌倉幕府にのみこまれた悲劇の地に生い茂る夏草に、諸行無常を感じる名句である。
俳句の中では美しいが、この時期の雑草のたくましさには閉口する。アスファルトやブロックの隙間から顔を出して伸びていく雑草を見ると、夏の暑さも相まって、その元気を分けてくれ、と思う。
梅雨が明ければ、本紙地域は本格的な観光シーズンを迎える。夏のイベントも目白押しで、官民ともにPRに余念がない。積極的な情報発信はすばらしいが、生い茂る雑草は気になる。特に尾鷲魚市場近辺は景観もよく、魚のまちの雰囲気もあり、イタダキ市や港まつりの舞台でもある。おもてなしのまちづくりのために、せめてここだけでも整えることはできないか。
交流人口増加のための積極的な情報発信は重要だが、同時にまちの魅力を向上させていかなければならない。積極的な取り組みの根源は、この地域の繁栄を願う心である。尾鷲は決して夢の跡ではない。
(R)