年末年始は慌ただしいものだが、今年の正月は出かける当てもなく、ゆっくりと過ごした。本を読む時間も多かった。

　まず読んだのが、故・青木健斉上人著『人生はんど仏句』。生前お会いする機会はなかったものの、精力的な活動や人となりの話を耳にすることは多く、どんな方だろうか、と思って手に取った。宗教的な話も多いが、体験談を交えながらの説法は分かりやすくて引き込まれる。読み進めていくと、なんだか対面して諭されているような感覚になった。今もなお、故人をしのぶ声が多いのもうなずける。

 

　先日発刊した『東紀州の昭和』も見応えがあった。児童であふれんばかりの学校や、華やかなりし商店街の様子は、うらやましく思える。戦時中の教育現場の写真もあり、戦争の被害とは銃火によるものだけでなく、日常や思想にもいびつな影響をもたらすものだということを感じた。

 

　文であれ写真であれ、まちの様子や風景を記録として残していくことの重要性を感じることは多い。さまざまなものがなくなっていくのは、特に過疎化が進む地方で避けられないことではあるが、あったことさえも忘れてしまうのは寂しい。

 

　　　　　　　　（Ｒ）