奈良県下北山村上池原の国道169号で23日夜に発生した土砂崩れ。これまでに少なくとも車2台が巻き込まれ、このうちの1台を運転していた三重県の50代男性は発生から約7時間半後に救助されたが、もう1台は26日に土砂の中で見つかったものの、運転していたとみられる和歌山県の70代男性の姿は確認できていない。
奈良県によると、現場は今年5月に降った雨で斜面が崩れたため、仮の防護柵を設置し片側交互通行としていた。復旧工事を予定していたものの、県の入札手続きにミスがあり、11月からの開始予定が年明けにずれ込んでいたことが明らかとなっている。国道169号では、2007年1月、今回と同じく片側交互通行としていた箇所で法面が崩落し車1台が巻き込まれ3人が死亡する事故が発生したが、教訓は生かされなかった。
国道169号は並行する国道168号とともに、当地方から大阪や京都方面に向かう幹線道路の一つだが、山間部を縫うように走るため、カーブや対向車同士のすれ違いが難しい狭小区間が多い。それでも最短距離で高速道路を使用せずに都市部まで入れることから、一般車両だけでなく物流トラックも頻繁に通るなど3桁の国道にしては交通量が多いといえる。一方、2011年の紀伊半島大水害で、土砂崩れや道路決壊など甚大な被害を受けた国道168号の復旧工事に携わった建設業関係者は「山間部の道路はいつ崩れるかわからない怖さがある」と話していた。今回の土砂崩れも直前に雨は降っておらず、現地を確認した専門家は、寒暖差で地下水が凍ったり溶けたりする「凍結融解」が繰り返され、「もろくなっていた岩盤が崩れた可能性がある」と指摘した。
両路線ともに距離が長く、改良を必要とする箇所も多いが、道路管理者は優先順位をつけながら必要な予算を確保し、なおかつ土砂災害などがあった場合は、しっかりと安全対策を講じるまで通行止めにする判断が必要ではないか。人命には代えられない。
年末年始は帰省や観光で人の動きが活発化し、交通事故をはじめあらゆる事故の危険性が高まる時期。それぞれの立場で一人一人がリスク回避の意識を持ち、事故なく新年を迎えられるようにしてほしい。