新型コロナが感染症法上の「5類」移行となり迎えた夏の観光シーズン。当地方の各地では外国人観光客の姿をよく見かけるようになった。今後、インバウンド(訪日外国人客)が右肩上がりだったコロナ前までに回復させ、日本人観光客を含めてどこまで伸ばせるか、地域経済活性化のために観光再生は大きな鍵を握る。
熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」がユネスコの世界文化遺産に登録されて今月7日で19年となった。20周年を迎える来年は、和歌山、三重、奈良の3県や沿線自治体による記念イベントが目白押しになるだろう。大勢の人を誘客するためにイベントは最良の手段だが、一過性ではなく、印象に残り、リピーターにつながるような魅力あるものを企画してもらいたい。
先月開かれた新宮市観光協会の総会では、会員から、新宮市の観光客の動態調査が的確に行われていないことや、市の観光素材が客のニーズを踏まえた観光商品になっていないのではないか、と指摘する声があった。受け入れ側の価値観の押し付けや自己満足では観光客に本当の喜びを感じてはもらえない。体験型観光全盛の状況も踏まえると、やはり戦略を立てた観光施策が大切になる。
20周年に向けて併せて行いたいのが、地元住民の関心を高めること。「知らない」「行ったことがない」という声もよく聞く。時間の経過とともに関心が薄れてしまうのは仕方のないことだが、保全を担うのは地域の団体で、ガイドも当然地元の人たちが行っている。関心を次世代につなげていかないと、観光振興も先細りしてしまうということを認識し、自治体や関係団体は対策を講じてもらいたい。
これまでも講演会や研修会などはよく開催されているが、知識の吸収だけではなく、もっと気軽に地元にある世界遺産を肌で感じることができる機会を設けることも一つではないか。幅広い世代が少しずつでも地元の魅力に触れれば、さまざまな場面で観光客へPRが期待できる。それはパンフレットの説明などよりはるかに効果的かもしれない。冷めた熱を再燃させ、住民一人一人におもてなしの心で迎える意識を持ってもらえれば心強い。来年に向けて地域全体で観光を盛り上げる機運を作ってもらいたい。