どの地域でも少子化による学校再編や統廃合は避けて通れない道かもしれないが、新たな学校をつくるにあたり、「子どもファースト」を大前提に議論を進めることが大切になる。本紙エリアでは、令和7年4月に三重県立紀南と木本の両高校、同8年4月に和歌山県立新宮と新翔の両高校、同9年4月に新宮市立緑丘と城南の両中学校がそれぞれ再編・統合される見通しだ。
先日、新宮・新翔の両校主催による地域説明会が開かれた。統合後の学科や部活動、校舎の扱いなどについて一通り説明したあと、質疑応答の時間が設けられた。その中で積極的に発言していたのは現役の高校生たちだった。
団体競技のクラブは部員不足のため、すでに合同チームとして活動しているケースがあり、「早く一体となれるようにしてほしい」と願う声が出た。新たな学校の制服については「私服の併用は考えられないか」との意見。ほかにも、国が進めるICT教育に触れ「インターネット環境の整備をしっかりお願いしたい」と指摘する声や、「校舎のトイレを洋式にしてほしい」との要望など、生徒目線の声が相次いだ。
発言した生徒たちに共通していたのは、新しい学校のあり方を決める計画段階から現役生を参画させるべきとの意見。教職員や事務方(教育委員会)など「大人」の意見だけで作り上げた計画では、耳障りのいい言葉が並びながらも、これから入学を控える生徒たちにとって分かりにくかったり、魅力が十分に伝わらなかったりすることも考えられる。
新宮・新翔の両校では、県教委による再編整備計画が示されてから、地域との結びつきが県内の他地域に比べて強い特性上、地域からの意見を募り、それを計画に反映させるよう努めてきた。県教委の”押し付け”ではなく、地域の実情に合わせた構想案をまとめ昨年末に発表。今回の説明会で再編に向けて地域からも一定の理解を得られたと思われるが、何より生徒たちの意見が頼もしく、今後具体的な計画を決めていくにあたっては、必要不可欠な存在であると感じた来場者もいたのではないか。
現場の声や意見を聞くことは、何においても大切なこと。大人が気付かない部分に気付き、妙案をひらめくこともあるだろう。新たな学校づくりに携わるという貴重な経験は社会に出てからも役に立つはず。来週には、緑丘中と城南中の統合に向けた保護者説明会が予定されている。保護者の意見と合わせて、市教委には現場(生徒たち)の声を聞く準備にも努めてもらいたい。