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社説「『ヒートショック』もっと周知を」

 主に冬場、高齢者の入浴中に起こりやすい「ヒートショック」。聞きなれない言葉かもしれないが、暖かくなる春先でも油断できず、この機会に意識してもらいたい。暖かい部屋から寒い部屋に移動した際、急激な温度差によって血圧が大きく変動することがある。それにより、失神や脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす現象のことだが、最悪の場合は死に至る。

 和歌山県新宮保健所によると、新宮・東牟婁管内で、浴槽内での溺死件数は令和3年10月~令和4年5月の先シーズンに5人いた。全国の統計では、浴室付近でのヒートショックによる死者は、浴槽内での死者の約5倍にのぼると推定されており、それを当てはめると、同管内でも先シーズン20人以上が亡くなった可能性もある。持病や前兆がなくても、暖房の効いた部屋と脱衣所・浴室の寒暖差が10度以上になれば、危険度は高まる。まずはその知識を持つことが大切になる。
 
 本紙3日付で報じたように、「予防に力を入れることで、ヒートショックによる犠牲は減らすことができる」(新宮保健所長)と話すが、予防のためには必要な知識を住民に周知しなければならない。今回、取材に協力してくれた新宮保健所では、さまざまなところからデータを集めて説明してくれたが、全国の統計は随分前の数字だった。実は当初、新宮市保健センターに取材依頼したところ、根拠となる国や県の資料がないため明確な返答ができないとのことだった。
 
 交通事故の死者数は近年、減少傾向が続いている。道路環境の整備や車の安全性能向上、救命救急の進歩など、さまざまな要因はあるが、何より春秋の全国交通安全運動をはじめ、年間を通した啓発活動により、住民の交通安全への意識の高まりが大きい。毎年、交通事故死者数を大きく上回る死者を出している「ヒートショック」を国や県はどの程度「危険」と捉えているのか。
 
 当地方は高齢者が多い。同居家族がいれば注意を払うことができるが、独居の場合、自分が意識して気を付けなければ、万一のことがあってもすぐに発見してもらうことは難しい。行政当局には、さまざまな機会をとらえて周知することを真剣に考えてもらいたい。
 

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