旧三木里小でピアニストの中村天平さんのコンサートがあった。想定以上に聴衆が集まり、講堂は満員御礼。演奏がすばらしかったのはもちろん、この日はよく晴れていて、開演前にわいわいと大勢の人でにぎわうかつての学び舎は、心に響くものがあった。
中村さんの「こんな校舎で育ちたかった」という言葉には同意できる。小さなまちの、昔からある学校には、古びた校舎や設備が醸し出すレトロ感なのか、地域の中心として多くの子どもたちを育ててきた歴史の積み重ねがにじむのか、得も言われぬ魅力がある。
移住や誘客を議論する時、「こんなまちに何の魅力があるのか」という言葉を聞く。魚、林業、自然と根拠を挙げても「本当に魅力があれば人は減らない」という現実がつきつけられる。
中村さんは日本全国ツアーの千秋楽に熊野古道センターを選んだ。世界で活躍するピアニストが紀伊半島に魅せられてツアーを続けていて、小さな講堂でコンサートを開いたのも、れっきとした事実。このまちに人をひきつける何かがある。
(R)