子どもの頃にいつも見ていた怖い夢がある。自分の寝床のところを、這うような一人称の視点で見ている。寝床の足元の横にある灯油ストーブの位置から枕の方に向かって、ゆっくりと進んでいく。その先には姉が寝ている二段ベッドがある。それが、なぜだか進んでいくのが心底怖くなるのだ。行きたくない、行きたくない、と頭では念ずるが、しかし少しずつ進んでいく。ただし、姉が怖いわけではないということは断っておかねば怒られるだろう。たしかに恐れるに足る姉ではあるが、その夢に姉は出てこない。ただ、胸の内がぞわぞわとするように、何かを恐れているのだ。
人が怖がるのには条件があるのだろうか。私の仮説はこうだ。人の恐れは「無知」と「無力」から来る。例えば目の前に見たこともない人間サイズの生き物が現れたら怖いのではないか。この生き物が優しい性格だとしても知らなければ怖い。ではこの生き物がクマだったらどうだろうか。知ってはいるが、攻撃されたら抵抗できないため、やはり怖いのではないだろうか。
夏は怪談の季節。皆さんは怖い夢や体験がありますか。
【稜】
