春を告げるサインは、サクラを代表格としながらも多々ある。そのうちの1つは「チュンチュン」と鳴き風のようにひらめくツバメだ。当紙本社の玄関の軒下にもツバメの巣があり、毎年春ごろになると「ピィ、ピィ」とさえずるヒナに懸命に餌を届ける親鳥の様子が見られ、心が和らぐ。
しかしそんなのんきな私とは違い、彼らは必死である。昨年にはある小学校で地面に落ちたヒナが声を上げているのを見た。職員は「人のにおいがつくと面倒を見てもらえなくなるから」と、残念そうに見守っていた。
最近は、ネコを追いかけまわすツバメもいた。ネコが逃げる方向から逆にたどると、そこには巣が。親が子を守るため、あの小さな体で大きなネコに命がけで立ち向かう様は圧巻だった。
先日の孔島・鈴島例大祭では、神事の最中に窓からツバメが迷い込む珍事もあった。そんな中眉一つ動かさずご神事を続ける神職には脱帽だが、迷い込んだツバメに外から必死で呼びかけるペアのツバメにも、純粋な情愛を覚え感心する。
まちの中にあっても、彼らはまぎれもなく野生。命の躍動こそ春の知らせである。
【稜】