たまに、自分の体が自分の体でないような、意識が宙にふよふよ浮いて、体を動かしているのか、体に動かされているのかわからないような、そんな感覚になる時がある。心理学では「離人症」などと言ったりするらしいが、酒を飲んで酔っ払うと誰でもそうなることを思えば、別段、病気として取り立てて騒ぐようなものでもないのだろうと思い、そういう時にはまあなんとなく、いかんともしがたいその浮遊感を楽しんだりする。
しかしそうしていると、ふと、私は私なのだろうかという疑問が浮かんでくる。これは崇高な哲学的問いではなく、むしろ理性の機能不全のうちに生じるのんべんだらりとした感覚的な思い付きである。例えば、私は就寝中、寝言を言っているらしい。目撃者によると、起きているかのごとくはっきりとした口調で、誰かと会話をしているという。私の中に私に制御できない私がいる。それは私と呼べるのだろうか。
しかし、無意識の存在は誰もが認めるところでもある。かの相田みつを氏も「根はみえねんだなあ」と言っていた。私という誰かを、今日も有り難く堪能しよう。
【稜】