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紀南抄「質問の強制力」

 質問には、必ず強制力がはたらく。これが取材する上では厄介である。

 例えば、「この活動はどんなねらいでやっていますか」という質問。本人は明確なねらいや理由、目的なくなんとなくやっていたとしても、これに答えるためには言葉を紡がなければならない。あいまいな状況に言葉を当てはめることで、そこに含まれなかった微妙なものはこぼれ落ちていってしまう。本人も質問者も無意識のうちに、過不足を含む事実が生まれる。

 もっと端的な例は、「勉強になりましたか」「これからも活動を続けていきたいですか」「楽しかったですか」などといった誘導的な質問である。「はい/いいえ」で答えられるような質問を「クローズドクエスチョン(閉じた問い)」と言う。これは相手の答えを限定するため、より質問する側の強制力が高まるのである。

 思いを言葉にするのは多かれ少なかれ過不足が生じるものではあるが、質問にはそれを他者が強いるきらいがある。相手がなるべく自然な言葉で語れるよう質問の仕方を工夫しつつ、せめて言葉にしてもらったものはすくい取れるようにしたい。

【稜】

      紀南紗

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