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紀南抄「技術との共生」

 便利になり続けるのは、良いことなのだろうか。

 ネットやスマホの普及で人の生活は飛躍的に便利になった。知らないことはその場で概要を調べられ、見知らぬ土地でも地理を把握することなく目的地にたどり着き、外へ出ずとも会議や飲み会ができる。人類は太古の昔から、火や言葉の使用に始まり文明の発達とともに利便性を向上させてきた。

 便利になるとは、言い換えれば人の能力でできることを外の機能に代替させるということである。車は足を、スマホは脳を、お金は手間や技術を代替する。

 利便性に代償はないのだろうか。便利になれば幸せになるというのであれば、例えば自殺は減り続けるかもしれない。しかしテクノロジーの進歩はその結果をもたらしていない。“喜劇王”チャップリンは「私たちはスピードを開発し、自分たち自身を孤立させた」と言った。効率的に時間を使えるようにすることが、人と人とのつながり、自然とのつながり、体を動かすことなど、人間、あるいは生き物としての基本を置き去りにさせてきた。

 利便性に人が食われぬよう、技術との共生という視点を持ちたい。

【稜】

      紀南紗

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