「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物は何か」。この答えは「人間」である。朝とはすなわち生まれたばかりで四つ足、昼とは成長した時で二足歩行、夕は年老いた時で杖(つえ)をつくから三つの足で歩く。古いなぞなぞである。
先日、祖母が家の中で使う杖が必要とのことで、家族6人で墓参りに行った帰り、付き添いで初めて杖屋に行った。店内には、さまざまな形状、さまざまな材質、さまざまな図柄でできた杖がずらりとならび、自分の出番を今か今かと待ち構えているようであった。祖母が選んだのは、持ち手がT字型のようになっている木製の杖。木製は特有のしなりのため、立ち上がる時に力が入りやすいという。
「生老病死」が人の宿命ならば、杖も決して他人事ではない。そう思えば、先のなぞなぞにも不思議な重さを感じる。それは老いに対する嫌悪ではなく、人としての自然な流れの中に自分自身もいるという安堵の重力なのだと思う。友人の中には年をとりたくないという人も多い。しかし、三本足でも確かに一歩ずつ帰路を歩む祖母の背中に、「自分も良い年の取り方をしたい」と思いが募った。
【稜】