補陀洛山寺で7月1日まで、刺繍家・星野さんの千手観音の作品が展示されている。
中学生の時、教師から「将来何になりたいか」と聞かれ、「かっこいいおじさん」と言ったらクラスから笑われてしまった。その際、教師から「あなたにとってのかっこいいとは」と聞かれ答えられなかったのを覚えている。
20代に入って、かっこいい人はみんな「強さ」を持っていると気づいた。ただ、きっとあの先生にそれを伝えたら「あなたにとっての強さとは」と禅問答的、ソクラテスの問答法的質問が跳ね返ってくることだろう。
そんな中で20代後半。人の強さは、「しなやかさ」だと感じている。今あの教師と話せるなら、私は、カチカチに折れない強さでも、他を押しのける圧倒的な強さでもなく、どれだけ外から力が加わってもブレずにしなやかに受け止める、若木のような強くかっこいいおじさんになりたいと伝えるだろう。
星野さんの作品タイトル「レジリエンス」という言葉は、心理学的にはネガティブな出来事から立ち直る力、その内的な弾力性のことを指す。星野さんは、闇にともる慈愛の光でそれを表現したのだと感じた。
【稜】