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紀南抄「PCR検査」

 知識として知っているということと、実際に体感して理解しているということの間には、大きな違いがある。

 以前、PCR検査を受けたことがある。検体採取のため、長い綿棒を右の鼻の穴から奥まで入れられ、そこで数秒間ぐりぐりと綿棒の先を押し付けられる。鼻の奥まで何かを入れたことがなかったので、驚いた。ツンとした痛みと異物感による涙、くしゃみが連続で出そうな感覚はすぐに思い出せる。

 検体採取は車で行った。窓を開け、看護師が笑顔で採取してくれるというすてきな手法。結果が出るまでには1時間ほどかかり、その間も病院の駐車場内で車中待機。結果は電話で知らされた。陰性だった。

 それまで記事でPCR検査の結果何人が陽性、何人が陰性などということは書いてきた。検査の方法も聞き及んではいた。しかし、やはり自分で体験するのは違うものだ。

 人間は情報化社会を加速させてきたが、情報との関わり方はその加速度に追いついていないように思う。自分の体で感じた一次情報の大切さは、インターネットを見ても学びきれない。面白い体験だったが、もう一度受けることがないよう祈りながら生活している。

【稜】

      紀南紗

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