お盆を迎え、当地方は帰省客や観光客でにぎわう。ふるさとで家族と再会する時間も、海や川、山の自然に親しむ夏のひとときも、この地域の大切な風景。しかし、そのにぎわいの陰で、水難事故や交通事故の危険が高まる現実を軽く見てはいけない。11日には串本町と熊野市でそれぞれ、海のレジャー中の事故で尊い命が失われた。楽しい休暇が一瞬の油断で悲劇に変わる。大切なのは形式的な注意喚起ではなく、命を守るための実効ある対策だ。
恐ろしいのは、慣れと気の緩み。地元の人は見慣れた海や川だから大丈夫だと思い込みやすい。帰省客や観光客は、穏やかに見える水面の下に急な深みや流れの変化が潜んでいることを知らない。子どもから目を離す、飲酒後に水辺へ近づく、天候の変化を軽く見る。このような行動が取り返しのつかない事故を招く。水難事故は不運ではなく、防げる事故と考えなければならない。
道路事情も同じ。お盆は人も車も一斉に動き、慣れない道を走る車が増える。休暇中は開放的な気分で気持ちに緩みが出やすく、さらに夏特有の体のしんどさもある。睡眠不足や体調が思わしくない時の長距離ドライブは危険。体調をしっかり整えたうえで、渋滞の発生も予想されることから、事前に無理のない運転計画を立て、こまめに休憩を取るなどして集中力を切らさない運転を心掛けてほしい。また、商業施設の駐車場でも注意が必要。車が頻繁に往来し、歩行者も行き交う。車内に搭載のバックモニターだけを見ていると、周囲の状況変化を見落とし思わぬ事故につながるケースがある。どの場面でもそうだが、交通の状況は常に変化していることを頭に入れ、駐車を完了するまで集中を切らさずにハンドルを握らなければならない。
また、13日から14日の明け方にかけて千葉県で発生した記録的豪雨。線状降水帯が3回発生し、一時「レベル5大雨特別警報」が出された。道路の冠水で車に閉じ込められた女性が亡くなるなど、14日朝までに4人の死亡が確認されている。近年の気象状況を見ると、いつどこで集中豪雨が発生しても不思議ではない。台風の進路から遠く離れていても油断せず、最新の気象情報の確認を習慣づけることが大切。
一方で、事故防止や自然災害への備えを個人の注意に委ねるだけでは不十分である。行政は危険箇所の表示や案内を総点検し、警察や消防をはじめ関係機関は連携して見回りや声かけを強めるべきだ。お盆を楽しかった思い出で終わらせるためにも、安全確保を最優先に据える姿勢を徹底したい。
