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社説「詐欺防止へ『接種無料』周知を」

 新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、現金をだまし取ろうとする詐欺行為が各地で報告される中、新宮市内でも22日に発生した。男女2人が首に名札を掛けて市健康長寿課職員を名乗り、60代男性宅を訪問。1人1万2500円支払えば、特別枠で優先接種が受けられるなどと、言葉巧みに持ち掛けたが、不審に思った男性が「おかしいんじゃないか」と言うと、その場を立ち去ったという。コロナ禍の不安な気持ちに乗じた許し難い犯罪だ。

 国が進める正規のワクチン接種は全額公費負担のため、無料で受けられる仕組み。各自治体から案内や接種券が郵送されてくる。電話やメールで料金の支払いを求めたり、個人情報を聞き出そうとしたり、先述の新宮市内での事案のように直接訪問することもない。
 
 全国で緊急事態宣言が解除されたが、感染者数は高止まり傾向が見られ、まだまだ終息が見通せない状況が続く。そんな中で進むワクチン接種。那智勝浦町は今週から、優先接種対象の75歳以上の町民に接種券を送付。新宮市は高齢者の接種時期について、4月下旬から集団接種、5月上旬から個別接種の予定であることを明かし、現在、接種券送付の準備を進めている。期待感から気持ちが前のめりになっている人も多い。また、ワクチン供給量や接種時期などの情報が二転三転することで人々の不安につながり、詐欺グループに付け入る隙を与えることになる。
 
 本紙エリアの自治体の多くは、コロナ対策の専門部署を置き、ワクチン接種への対応にあたっているが、正確できめ細かな情報発信が何より大切であることを再認識してもらいたい。併せて、身近で詐欺行為が発生していることを具体的な事例を交えて伝え、注意喚起を繰り返すことに努めなければならない。もちろん、自己防衛も必要。特に一人暮らしの高齢者などは詐欺の標的にされる恐れがあり、離れて暮らす家族や近所の人は気にかけてほしい。留守番電話や自動録音機能を使うこと、電話口の近くに「詐欺に注意」の紙を貼ることなども防衛手段の一つとして消費者庁は勧めている。
 
 消費者庁によると、ワクチン接種だけでなく、身に覚えのない商品を送り付けるなど、コロナに便乗した犯罪は昨年から増加傾向あるという。こうした詐欺行為に遭ったり、不審な要求などを受けたりしたら、一人で迷わずに警察や消費者ホットライン「188」(局番なし)に相談してほしい。
 

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