「今度こそ」 地元自治体も期待
スペースワン株式会社(東京都港区)は15日、自社の小型ロケット「カイロス」3号機を来年2月25日(水)午前11時に串本町田原のスペースポート紀伊から打ち上げると発表した。同社は「宇宙宅急便」と名付けた民間での宇宙インフラの構築に向け、2030年代に年間30回のロケット打ち上げを目指している。軌道投入に失敗した前回2024年以来3度目の挑戦となり、ウェブ上で会見した豊田正和社長は「わが社の覚悟そのもので、前例のない挑戦だ。2度の失敗はかけがえのない経験となった。応援をお願いしたい」と語った。
同社によると、今回打ち上げる3号機は全長約18メートル、全備約23トン。約1年かけて制御センサーの信号異常など前回の反省点を特定したうえで、経路の強化や耐熱性を向上させたという。24年3月に打ち上げた初号機は直後に爆発したが、2号機は同年12月に高度110キロの宇宙空間に到達したほか、衛星を保護するカバー「フェアリング」の開頭に成功した。
今回は成功すれば民間初となる衛星投入を目指す。衛星は計5基で、同社と協定を結ぶ広尾学園高校(東京都港区)の生徒が製造した「HErO」や台湾国家宇宙センターがアマチュア無線の電波伝送実験に使用する「NutSat-3」などを搭載する。予定軌道は前回と同じで、太陽と同期の高度500キロとしている。
豊田社長は「全ての課題を把握するために1年を要した。進展性の確立を重視し、機体の点検を徹底的にじっくり行い、技術基盤の構築に取り組んだ」と説明。同社の担当者は「3度目が仮に失敗しても事業は続ける。リスクを乗り越えることが重要だ」と強調した。
会見を受け、和歌山県の宮﨑泉知事、串本町の田嶋勝正町長、那智勝浦町の堀順一郎町長が歓迎のコメントを発表した。宮﨑知事は「幾多の困難を乗り越えて挑戦し続けるスペースワン社に敬意を表する。成果を踏まえ、人工衛星の軌道投入が実現することを期待している」。田嶋町長は「串本から三度、宇宙への挑戦が行われることを誇らしく思う。町にとって新たな交流や産業創出の契機となり得る大きな可能性を秘めている」と期待感を示し、堀町長は「同社が目標とする年30回の打ち上げが実現し、地域振興につながることを期待する」とつづった。
また、打ち上げに伴い、周辺の陸上・海上を「警戒区域」に指定し、区域内で人やドローン、ヘリコプター、船舶などの侵入を禁止する。海上では同社の警戒船が監視を行う。海上は打ち上げの2時間前から数分後まで、陸上は最大2日前から1時間後まで措置を講じる。侵入が確認された場合、打ち上げを実施できなくなるため、同社は警戒船などの指示に従うよう求めている。
