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自分だけの命じゃない 尾鷲高で交通事故遺族が講演

 県立尾鷲高校で13日、みえ犯罪被害者総合支援センターと県警共催の「命の大切さを学ぶ教室」が開かれ、28年前、当時16歳だった息子を交通事故で亡くした東員町の鷲見(すみ)三重子さん(71)が講演した。1、2年生と教職員の約250人に「命は自分だけのものではない。自分を大切に思ってくれる人の命でもある」と語りかけた。
 
 鷲見さんの長男、拓也さんは通っていた高校の部活帰りに、信号のない横断歩道で脇見運転の乗用車にはねれた。病院に運ばれたが一度も目を覚ますことなく、2週間後に息を引き取った。
 
 鷲見さんは最愛の息子を失った現実を受け入れられず、毎日の家事など何も手につかず、一日中椅子に座って拓也さんの帰りを待っていたという。「社会は動いているのに、私の心と体は止まってしまった」と絶望の日々を振り返った。
 
 交通事故から3年後、事故現場に信号機が設置され、拓也さんが通っていた高校の生徒会が「命の代わりの信号機」と題したビデオを作成し、拓也さんの死を無駄にせず語り継いでいくことになった。
 
 これがきっかけで鷲見さんに前を向く力を与えた。多くの人の活動や人との出会いを通じて立ち直り、今も命の大切さを訴えるための活動を行っている。「生きているうちに何かやらなければ、あちら側で拓也に合わす顔がない」と話した。
 
 拓也さんと同年代の生徒らに向かって「社会には理不尽で何の非もなく命を絶たれた人がいっぱい。でも一生懸命生きていると助けてくれる人、支えてくれる友人もできる」と周りの人も大切にすることを呼び掛けた。
 
 その上で「皆さんは一生懸命勉強して夢をかなえようとしているが、被害者、加害者になるとそれが難しくなる」とし、社会のルールを守り、人々が元気で力を発揮できるプラスの言葉を大切に使うことを求め、「それを守ることで自分の命も他人の命も守れる」と結んだ。

      3月14日の記事

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