新宮下本町遺跡が11月に国史跡に指定を受けたことを記念して17日、その歴史的価値や今後の活用方法を考えるシンポジウムを新宮市が開催した。基調講演を新宮城下町遺跡調査委員会で委員長として携わってきた黒崎直さん(富山大名誉教授)が担当。特に今後の遺跡活用について、示唆に富んだ内容を伝えていた。
遺跡の重要性については「中世以降、太平洋の開運の重要な拠点であった新宮における港湾や海を介した交流の実態を知る上で重要なだけでなく、中世の海上交通と宗教勢力との関係や、平安時代末ごろ以降から全国へ信仰が拡大する熊野三山の経済基盤などについて考える上でも重要」と言及。その遺構は丹鶴ホールの地下に眠っているが、発掘された地下式倉庫群や石段通路などは確実に保存されているとし、今後の活用方法を考える必要性を訴えた。その中で、「誰のために史跡を整備するのか」が大切とし、「市民・県民に愛され使われる遺跡が一番」と話していた。
せっかく国史跡に指定された遺跡が施設の地下にしかないのでは、ありがたみもおもむきも感じ難い。有効な利活用をみんなで考えたい。
【稜】