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紀南抄「熊野大学の公開講座」

 熊野大学による公開講座が行われた。佐藤春夫生誕から中上健次逝去までの100年間に注目し、そこから近代文学の100年を精査する試み。新宮と縁の深い文学についての、非常に熱のこもった講座だった。
 
 「文学は何のためにあるのか」という問いに、われわれは何と答えれば良いのだろうか。物理学や医学などは人の生活にわかりやすく貢献するが、文学の研究を進めても生活が目に見えて豊かになるということはない。それでも脈々と受け継がれている理由は何か。一つの答えを、「歴史が記述できないものを描くことができる」という文学の性質に求めたい。
 
 歴史は「勝者」が残した「事実」だ。彼らにとって不都合なことは語られない。では「敗者」はどこで自分たちを表現するのか。その一端を担ったのが芸術であり文学なのではないかと思う。表現者は、作品に紛れ込ませる形でフラストレーションを吐き出したのでは。
 
 講座では、熱が高まるにつれて講師の表情もこわばっていくように見えた。文学を語るという行為自体が、その根底にある怒りのような感情に触れる行為なのかもしれない。春夫と中上から熊野を読み解きたい。
 
【稜】

      紀南紗

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